4年に一度の祭典、サッカーW杯。
今年6月に、北中米W杯が開催されます。
普段はサッカーをそこまで観なくても、W杯だけは観るという人は多いと思います。
私も普段野球は観ませんが、WBCは観てました。
たぶん、W杯だけサッカーを観る人も多いと思います。
でも、サッカーの面白さはゴールだけではありません。
「なぜあのチームは強いのか」
「なぜ押し込まれるのか」
「なぜボールを奪えないのか」
“なぜそうなっているのか”が見えてくると、W杯はもっと面白くなります。
今回紹介するのは、そんな「サッカーを深く楽しめるようになる本」2冊です。
1冊は、サッカーの戦術や守備の考え方を学べる『BoS理論』。
もう1冊は、PK戦に潜む極限のプレッシャーを分析した『なぜ超一流選手がPKを外すのか』です。
試合中に起きていることを“理解しながら観る”ための本です。
W杯は日本時間の6月12日に開幕。
そこから約1ヶ月、ほぼ毎日W杯の試合が続きます。
W杯をより楽しみたい人に、ぜひ読んでほしい本です。
『BoS理論』 著者:河岸 貴

サッカー関連の本はこれまでたくさん読んできましたが、その中でも特に面白かった1冊です。
「ボールを奪うこと」を、ここまで論理的に説明してくれる本はなかなかありません。
BoS(ベーオーエス)理論とは、ドイツ語の「Das Ballorientierte Spiel(ボールにオリエンテーションするプレー)」のこと。
簡単に言えば、「どうやってボールを奪い、どうゴールにつなげるか」を、逆算して考える理論です。
著者の河岸貴さんは、ドイツ・シュツットガルトで指導者やスカウトを務めた経験を持つ方。
本書で特に印象的だったのが、ドイツの指導者たちが日本のクラブを見た際の言葉です。
「ボールを奪う意図が見えない」
「奪いどころがわからない」
つまり、日本のチームは「なんとなくプレスをしている」状態になっている、ということです。
もちろん選手だけの問題ではありません。
ただ、日本人は本来、組織的に連動することが得意なはずなのに、サッカーになると「11人で守る」ではなく、「それぞれが個別に戦っている」ように見える。
そんな指摘が本書にはあります。
その話を裏付けるのが、日本代表の田中碧選手の過去のコメントでした。
2021年の東京オリンピック、3位決定戦後に残した、
「彼らはサッカーをしているけれど、僕らは1対1をし続けているように感じる」
という言葉です。
この一言は、日本サッカーの課題を象徴しているように感じました。
本書は、特に「ボール非保持」、つまり守備やプレスの考え方が非常に新鮮です。
- どのタイミングで寄せるのか
- どの距離感なら相手に自由を与えないのか
- どこへ追い込むのか
- なぜその方向へ限定するのか
などが、実際の試合をベースに解説されています。
逆に、「攻撃パターンを学びたい」という人には少し違うかもしれません。
相手のマークを外す動きや、崩しのアイデアなどよりも、「どう奪うか」に重心が置かれています。
また、ドイツ語の戦術用語が頻繁に出てくるので、そこは少し読みづらさを感じるかもしれません。
それでも、難しい戦術図が延々と出てくる本ではなく、
「なぜそこに選手が走ったのか」
「なぜ相手を外へ追い込んだのか」
を分かりやすく説明してくれる本です。
この本は、
- 戦術に興味がある
- ボールを持っていない場面にも注目したい
- 「なぜそこにプレスに行ったのか」を理解したい
という人には、かなりおすすめできる1冊です。
この本を読んでから試合を観ると、「なんとなく観る」から一段深くサッカーを楽しめるようになると思います。
『なぜ超一流選手がPKを外すのか サッカーに学ぶ究極のプレッシャー心理学』 著者:ゲイル・ヨルデット

W杯で、避けて通れないのがPKです。
そしてPKは、サッカーの中でも最も緊張感が高まる瞬間のひとつだと思います。
本書によると、2006年ドイツW杯では、ドイツ代表のPK戦の日に心臓発作で搬送される人が増えたそうです。
観ている側ですらそれほど緊張するのだから、蹴る選手にかかるプレッシャーは想像以上でしょう。
この本は、そんなPKを徹底的に分析した1冊です。
- PK成功率のデータ
- 成功する選手の特徴
- キッカーが蹴る前に何を考えていたか
- GKとの駆け引き
- PK前後の行動
など、さまざまな角度からPKを掘り下げています。
特に面白かったのは、「キックそのもの」だけでなく、PK前の細かいやり取りまで分析しているところです。
たとえば、
- GKが何か仕掛けてきたか
- キッカーがボールをセットしてから、蹴るまでにどれくらい待ったか
- チームメイトがどう振る舞ったか
など、様々なところにまで注目しています。
本書ではGK視点の話もありますが、どちらかと言えばキッカー側の心理分析が中心です。
また、通常の流れの中でのPKよりも、「試合の決着を決めるPK戦」に重点が置かれています。
サッカーでは、
「PKは運」
「PKはくじ引き」
と言われることがあります。
フランス代表のデシャン監督も言っていたそうです。
でも、この本を読むと、とても“運だけ”には思えませんでした。
選手個人だけでなく、監督やチーム全体として準備できることがある。
むしろ、準備しているチームほどPK戦に強いのではないか――。
そう感じさせられます。
特に印象に残ったのは、PK戦前の監督の振る舞いについての話です。
監督が落ち着いているか。
PK戦を想定して準備しているか。
その雰囲気は選手にも伝わるそうです。
逆に、「準備していない」「考えていない」と選手が感じれば、不安になる。
これはサッカーだけではなく、仕事やマネジメントにも通じる話だと思いました。
普段の仕事でも、上司と話していて
「この人はちゃんと準備している」
と感じると安心できます。
本書には、プレッシャーへの向き合い方や緊張への対処法も書かれているので、サッカー以外でも参考になる部分があります。
そして個人的に驚いたのが、著者のゲイル・ヨルデットさんが、日本代表の遠藤保仁選手に直接インタビューしていたことです。
しかもテーマは、有名な“コロコロPK”ではありません。
2010年W杯で遠藤選手が蹴ったPKについてでした。
審判の笛が鳴ってから蹴るまで、遠藤選手は平均より長い時間を使っていたそうです。
ヨルデットさんは、その「間」に興味を持ったとのこと。
さらにヨルデットさんは、2022年W杯で日本代表がPK戦敗退した後、日本国内で「PKキッカーを挙手制で決めたこと」が議論になっていたことまで把握していました。
世界中のPKを研究している熱量が、本を通して伝わってきます。
本書によると、主要大会のトーナメントでは「5試合に1試合」がPK戦になるそうです。
つまり、日本代表が勝ち進めば、PK戦を経験する可能性は十分あるということです。
W杯でPK戦になった瞬間、観る側の緊張感は一気に高まります。
でも、この本を読んでいると、
「チームはどんな準備をしているだろう」
「監督はどんな振る舞いをしているだろう」
と、また違った視点でPK戦を観られるようになります。
W杯の試合をたくさん観る予定の人には、ぜひ読んでほしい1冊です。
最後に

W杯は、ただ「勝った・負けた」を楽しむだけでも面白い大会です。
でも、
・なぜその守備が機能したのか
・なぜPKで明暗が分かれたのか
・なぜあのチームは試合を支配できるのか
そんな部分まで見えてくると、観戦はさらに面白くなります。
今回紹介した2冊は、“サッカーを深く理解するため”の本でもありますが、“W杯をもっと楽しむため”の本だとも思っています。
W杯の1ヶ月は、あっという間です。
その前に少しだけ“観る視点”を増やしておくと、毎試合の面白さが変わってくると思います。
北中米W杯が始まる前に、ぜひ読んでみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました!

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